M1・かに星雲(超新星残骸)のスペクトル


M1(かに星雲・超新星残骸)
BKP300(1500mm f5), MPCC-MK3, HEUIB-II, Sony α7s(新改造), ISO12800, 30s x 12, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2018/12/07,23h JST., +1.0℃, 東御市・観測所 視野角: 19′ x 13′  ↓N

かに星雲はおうし座にある超新星残骸で地球から約7000光年離れた場所にあります。この星雲の元となった超新星は1054年に出現したSN 1054で、中国(宋史)や日本(藤原定家の明月記)で客星として記録されていて金星ほどの明るさとなり23日間に渡って昼間も見えたとあります。

可視光で撮影すると星雲を覆うようなフィラメント構造がわかり、超新星爆発によって星雲は現在でも秒速1,100kmの速度で膨張しつつあります。その中心部にはパルサー(中性子星)があり超高速(秒間30回転)で回転しながら、電波からガンマ線にいたる電磁波で強烈なエネルギーを放出して星雲全体を明るく照らし出しています。

明るい星雲なので小口径、低分散の自作分光器でもパルサーの照らし出す中心部とフィラメント部の様相の違いぐらいはわかるだろうと分光器を向けてみました。

かに星雲の分光観測


<fig.1> M1(かに星雲)のスペクトル
BKP300(1500mm f5), Sony a7s(改造)、自作分光器(愛光者7号)、ISO102400, 30s x 12, 2019/1/11   長野県東御市・観測所

fig.1 の左側画像は分光器のスリットで切り出した部分がわかりやすいように、M1の画像を重ねてあります。星雲を上下(南北)方向に切った狭い幅のスリットを通った光だけが回折格子に導かれ、分光されて画面右にスペクトルとして記録されます。

画像中の点線A上のスペクトルは星雲のほぼ中央部を、点線B上のスペクトルは赤いフィラメント部を示しています。それぞれのライン上のデータを分析したものがfig. 2です。スペクトル画像からも明らかなように、Aの星雲中央部は中心部のパルサーから可視光で照らされているであろう部分で、水素、窒素などの輝線成分が弱いために連続光が優勢で可視光の画像では白く見えていることがわかりました。

Bのフィラメント部分は、酸素(OIII)、水素(Hα)、窒素(NII)、硫黄(SII)の輝線で光っていることがわかります。特に硫黄の輝線が強いために可視光で撮影すると強い赤で写るのでしょう。

Hgは、水銀灯由来の大気中の光害成分です。Hgの輝線は他の星雲由来の輝線に比べて細くくっきりとしています。OIIIやHαの輝線は途切れていたり、幅があったりして鮮明ではありません、特にB線上のHαはその上下空間ではよれて曲がっているように見えます。これは調べてみたら、かに星雲が秒間1,100kmという超高速で膨張しているため、輝線がドップラー効果で円弧状に曲がるためだということがわかりました。

<fig.2> M1・かに星雲 中央部Aとフィラメント部B 生データの解析グラフ

輝線のドップラー効果による乱れは、超低分散の分光器でも検出できることがわかりました。次は、クェーサーや遠方銀河の赤方偏移を確認してみたいものです。

 

 

 

 

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